国際陸上科学掘削計画(ICDP) の枠組みで、イスラエル・アメリカ・ドイツ・日本・スイスなどの研究者が連携し、死海深層掘削プロジェクト (DSDDP) が進められてきた。2010/11 年には、死海の北湖最深部 (ICDP5017-1地点、水深約300 m) において、湖底から深度455 m まで掘削され、堆積物コアが採集された(Stein, 2014)。堆積物コアの炭素14 年代測定(Kitagawa et al., 2017)及びウラン系列年代測定(Torstein etal., 2015)から、過去22 万年間 (3度の間氷期と2度の氷期を含む) のほぼ連続的な環境変動の記録が刻まれていることが明らになった (Neugebauer et al., 2014)。堆積物コアの堆積学・層位学研究 (Neugebauer et al., 2014; Kiro et al., 2017)及び堆積物及び間隙水の地球化学分析 (Lazar et al., 2014; Levy et al., 2017; Kiro et al., 2017)から、過去22 万年間の死海の湖変化に関した情報が得られている。ICDP-DSDDP で採集した堆積物コアは、レヴァント地方 (シナイ半島から地中海東岸に面した地域。現在のイスラエルの北部海岸・ヨルダン渓谷周辺の地方) における気候変動を探る鍵とし注目され、今後の研究の進展が期待されている。
2018年度から2年間、JSPS二国間交流事業 (共同研究) として、イスラエルの研究者と連携してプロジェクト「最終氷期の死海の水文学トレサーとしての炭素14」(Radiocarbon as hydrological monitor of the last glacial Dead Sea)を実施する。本プロジェクトでは、未だ十分に解明されていないレヴァント地方の水文変動の定量的な復元を最終ゴールとし、死海周辺の露頭及び堆積物コアの炭酸塩の炭素14 分析データを水文学的な観点で解釈する方法について研究する予定である。
日本側メンバー:
北川浩之・南 雅代・栗田直幸・山根 雅子(名古屋大学宇宙地球環境研究所)・内田昌男(国立研究開発法人国立環境研究所)
イスラエル側メンバー
Moti Stein(Geological Survey of Israel)・Boaz Lazar(The Hebrew University Boaz Lazar of Jerusalem)