圧力変動吸着同位体濃縮法による5万年以前の試料の炭素14年代測定

AMS 法による炭素14 分析の検出感度は炭素14/炭素比で10-16 程度であり、現状では5万年以前以降の試料の年代測定にしか適用することができません。炭素14 年代測定法が適用できる年代範囲を拡大する1つの方法は、AMS装置の性能を高めて現在の検出限界を改善することです(こちらは装置の開発企業のお仕事!)。他の発想は、試料に含まれる炭素14を濃縮して、現状のAMS法による炭素14 分析の検出限界より高めることです。後者のアプローチの先駆的な研究は、熱拡散カラムを使った同位体濃縮法(TD法)を応用したものである(Kitagawa and van der Plicht, 1997)。TD法は、濃縮ウランを得るために以前には利用されていました。一般的な実験室に設置できるようにスケールダウンした熱拡散同位体濃縮カラムを設計して同位体濃縮実験を行いました。試料に含まれる炭素14を約20倍(計算上、炭素14 年代測定の限界を過去に2万年間拡大)まで濃縮することに成功しました。しかし、複雑な試料処中の外来炭素の混入の問題を解決することができなく、実際の試料の年代測定への応用するにはさらなる研究が必要です。

近年、温室効果ガス(二酸化炭素ガスなど)の分離、高純度のガスの精製、原子炉の使用済みの高濃度の炭素14を含む炭素ロッドの処理法としてPSA 法が注目されています。PSA法はガスの分離精製法として産業ベースでも活用されています。PSA 法はガス成分の分離精製だけでなく、同位体の分離にも応用できることが確認されています(Izumi et al., 2013)。PSAはTD 法と比較して、シンプルな実験で同位体濃縮ができ、外来炭素の混入を極度に低減できる可能性があります。現在開発されているPSA 装置を実験室に設置できるようにスケールダウンすれば、AMS 法による炭素14 年代測定に応用できる可能性があります。この方法の開発実験を進めています。

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