太陽気候影響研究


名古屋大学 宇宙地球環境研究所 融合研究プロジェクト「太陽気候影響研究」

太陽の活動は黒点数に代表される11年前後の周期(太陽周期)で強弱の変動を繰り返していることがよく知られています。この太陽の周期変動による地球への日射エネルギーの変動の振幅は平均値の0.1%程度です。高度およそ10キロメートル以上の成層圏など高層大気に明瞭な変動をもたらすことが知られていますが、私たち生活している対流圏の気温に及ぼす影響はそんなに大きくないとされています。しかし、太陽活動の変動には、この11年前後の太陽周期よりもより長期な変動が重なっています。例えば、17世紀のマウンダー極小期には、太陽活動が数十年にわたって衰え、世界の多くの地域で寒冷化が進行したとされています。デンマークのスベンスマークは、「太陽活動が活発なときには日射エネルギーの増加だけでなく雲の減少を通じても地球の温度を上げる効果がある」との原理的にはおかしくない仮説を提唱しています。しかし、本当に効くのか、どれくらいの効果なのか、十分には説明されていなく、温暖化の将来予測に用いられる大気海洋のコンピューターシミュレーションである「気候モデル」にはその効果が組み込まれていません。太陽活動の変動によりもたらされる気候変化を正しく理解することは、将来の温暖化予測をより確かなものにし、その人間社会への影響を探るうえで極めて重要です。

融合研究プロジェクト「太陽気候影響研究」は、太陽活動の変動にもたらされる気候変動の実態を正しく理解を目指し、樹木年輪、湖沼・海洋堆積物コア、極域・山岳地帯の氷床コア、永久凍土などに記録されている気候変動を高い時間分解能で解読し、太陽活動と気候の変動の関連性についての実証的な研究を進めています。また、太陽活動の変動と気候変動を関連付けるさまざまな仮説について検証研究を宇宙科学・地球科学分野の研究者が協力して推進します。未来の地球環境に対する太陽の影響の正しい理解が最終ゴールです。